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レヴュー

6.05.Tokyo3am
6.25.川井郁子

レヴュー2009年6月 Index≫

6月5日(fri)『Tokyo 3a.m.』発表!Album Revue
Pianist 塩入さんだけが伝えられるピアノの魅力こそを。
心にじかに語りかける親密さと温かさを、奏でる喜びに乗せて贈ろう。優美で歌を謳うようなメロディに細やかな音色のフリルはトキメキと笑顔をいっぱいに拡げていくことでしょう。
ピアノ・ソロ曲は優雅さに静謐さを秘める深いメロディ。ピアノの繊細なタッチそのものの振動が心に添う癒しと優しい語りかけにどこかで見た情景とリンクするノスタルジーな感傷は温かな涙を連れてくる。
今迄サポートでの音色で聴き取ってきたオリジナリティで多彩な音色は、ソロでも主旋律を奏でながら添えられるテクニックと美しい装飾技は塩入さんOnlyと確信できます。
管弦楽の多層な音色は曲想を派手ではなくエキゾチックにドラマティックにも盛り上げ、気心の知れたメンバー=バンドとの演奏曲には奏者の個性を出せる構成感と信頼の元での熱いバトルまで感じちゃうワクワク感。
アルバムを聴きながらどんなにドラマティックな曲においても不思議と落ち着いている居心地のよい時間を感じていた。
総てに塩入さんを始め関わられておられる皆さんの真摯な気がぬくもりとして伝わってくるから。同録音もあるでしょう、ピアノはALL一発録り?あるがままの細やかなアコースティックな響きが自然の流れのように届き心のひだまでも、満ち足りた気分で包み委ねられるのです。
音楽の理想郷へトリップしたのかな。
塩入さんのスケールの大きい優しさを感じて止まない、いち聴き手の想いです。

1.君と出逢ってから ピアノ・ソロ
心にじかに語りかける親密さと温かさを、奏でる喜びに乗せて贈ろう。優美で歌を謳うソロに細やかな音色のフリルは心へパステルカラーを塗り重ね、トキメキと笑顔をいっぱいに拡げていく幸せが届きます。そっと語るメランコリックな展開には君への想いの深さを知り、夢見るように甘く、ロマンティックなメロディは一度聴いたら忘れられない魅力があります。
2.水のない河 ピアノ&チェロ:古川展生&ストリングス
Bassで流れた大河の嘆きが、再びチェロの響きで流れていく。チェロは沈潜した深みをやや遠い響きだけに想いを切々と絞り出し、胸が痛む。
心の底で流れ続ける堰を切った感情はピアノが慟哭する。美しいまでの見事なアルペジオは息を呑むほどに(takako.は和音でも不可能だわ)強音でも濁らない打音に管弦楽の美しいハーモニーが映え、心の奥底で流れ続ける純粋で熱い想いを感じます。
3.桜の時に♪ ピアノ&ストリングス
ヘッドライトの先、静まった漆黒の闇に粉雪は桜の花弁が如春風で舞い上がる如く戯れていた。私の心の闇を開き癒してくれるファンタジックな楽曲。ジャパネスクな旋律をピアノは邦楽器、和琴の侘びな音色でワルツを舞う。弦楽器は着物の衣擦れをさわさわとMIYABIに誘い、たおやかに踊る。
儚い幻想を漆黒の闇へ描く雪明かりは慎ましやかな美音の原点が戯れる 桜の時に
4.あの頃のままで ピアノ&ストリングス
過去への扉が開かれ、美しいフォルムの中で今も息づいている一期一会の大切な出会いと別れが鮮明に浮かんできます。
色んな事があったけれど思い浮かぶのは貴方の優しい笑顔と耳に聴こえる笑い声。女性には無いナイーヴな感性の中に力強い情熱をも感じる男性的な美しい作品と思います。
5.ある夏の午后に ピアノ・ソロ
君のことだけを想っている〜Until today〜97' あれから。
心がささくれて荒れてはいない?問いかけに蝉時雨が啼く。 そう 言葉に出さなくとも通ずる想いを築くことは可能なのね。
強い絆であるほど表面は柔らかく穏やかなのだから。と、ピアノが微笑む。ほらね夕蝉も優しく二人を見守っている夏の終わり。
6.Tokyo 3a.m.ピアノ&チェロ&バンド&ストリングス
う〜〜〜ん(納得の)都会の午前3時はオシャレだわ。さすが演奏者の皆様、大人の男性カッコよさをさりげなく聴く。
チェロの音色がスマートな装いで湿った深夜と排した夜明け、喧噪と自然音の狭間にそこはかとない寂しさを漂わせる。Barでの熱い語らいを冷ますように。
夜空には今宵ラストの流れ星が輝いているのね。涙でぼやけそう。内省の低音にピアニカの乾いた音色が凪の時は過ぎたよと知らせ、細やかな陰翳感を希望の煌めきが天空へ放とうとすれば、ギターのメロは海風の香りを運ぶ 傷口に沁みて痛いわ。これも私なの。
哀愁がロマン性を帯び、潤いを与えていく優しさのメロディに 素敵な女性になれそうな予感
Tokyo3.a.m. 2009初夏
7. de l'amour アコーディオン&ストリングスなど
国際線のロビー。ゆらゆらと陽炎が揺れるが滑走路の鉛色に人々の行き交う姿が映る。進もう。軽快なステップで。そこへ蛇腹を動かしリードに吹き込むボッサの涼風が椰子の梢を吹き抜ける。洗練されたアコーディオンのメロディが絶品です。
でもちょっぴり切なくシャープな切れ味と伸びる余韻の響き分けの妙に、吐息?それとも鼓動と相まってドッキリと胸が高鳴ってはいませんか?南国の熱い陽射しももう平気。小粋に刻むシンセ、ストリングスの木立がそよぎギターの音色が小波を寄せて。海の水はひやっとして思わずはしゃいでしまいそうな素敵な場所へ。
Departure搭乗案内のアナウンスが入った。
8.君のいた夏 ピアノ&バンド
熱く乾いた空気にgrapefruit-deuceが欲しい。確かあの辺りにあったハズ。お気に入りのカフェへgo。ドアを開けたら、あら、リフォームされて素敵なカフェに変身している。新しくてもあちらこちらに見つけちゃう懐かしさの匂いが年月を蘇えらせる。
素敵になった秘訣は、大好きなバンドメンバー達とのセッション。瑞々しく歌うピアノに各楽器毎の名プレーヤーが集まったのだから、出番と音の匙加減の呼吸感は任せろよと。ソロパートに粋を聴きピアノもJazzyに弾けます。
ライブを聴いているよう、今風の装いを加えたら、傍にいた君の声が遠く消えていった。
9. 追憶のオペラ ピアノ・ソロ
Barで、ピアノを奏でる詩人が語り始める物語を。
理性を保ちながらも貴方への想いで平衡が崩れていく感情の昂揚が哀しい。合間での穏やかな安堵が貴方の子を見守る母の優しい眼差しと無邪気な子供の姿を想い、熱いものがこみ上げる。
緞帳が振り下ろされるラスト幕にオペラ歌手の崇高な姿が投影されていた。 雑談が止み、いつの間にかお客様がしんと聴き入っていた。 ピアノのみでストーリーがドラマティックに謳われる、テクニックも立体的な構成も優れた作品と想います。
10.夕暮れと遠い日 ピアノ&チェロ
カフェで感じていた君のいた夏♪の声が届く。遠い彼方の愛おしさをぎゅっとこの手で掴みとれるのならば…。
広げた手にピアノの和色がノスタルジックな感傷を広げていくとチェロがそっと応える。ピアノが優雅に歌えばとチェロも悦び、音会話が素敵な曲。微細な対照性とチェロが遠近感を創るバランスは塩入さんと古川さんの感性の信頼に依るものであり、叙情性をより深遠から揺さぶる感動はゆるぎのない男性の包容力で包まれる幻想。幸せな曲(*^^*)
11.Rejection of White ピアノ&ストリングス&Band
塩入さんが、フィギュアスケートの大会を見てインスパイアされ生まれた楽曲ですね。
しぶきが顔を掠めた。冷たいっ!スコールの風雨が窓を白くぼかす。冷気が混じるその先は誰も立ち入ることが許されない、己だけの世界。自然の法則は白い拒絶。
厳しい季節での不安、苦難に耐え、表現できる自信と己への挑戦だけが試される場所。克服したい願い、暖かな季節を迎える喜びを豊潤なピアノが確信へと導く。より荘重に広がる音色は超快速で体に食い込んでくるが、音色に重たさを感じないのが不思議。氷の上を滑る主人公の華麗な舞を夢中で見るよう。
ピアノ&ストリングスの編成でうねりを起こし、壮大なオーケストレーション、ラストまで駆け抜ける集中力は、同録の真剣さがあって、Classical、NeoClassicでの塩入さんの演奏家そして作曲家、アレンジャーでと多彩な音楽シーンで築かれてきた証しが聴こえる秀逸な作品であると感じています。
私の帰る場所へ 12.夢のしずく ピアノ・ソロ
ひとりひとりに注がれてきたかけがえのない愛情と願いは繋がれていると気付く目と心を持ち続けていたい。悠久の感情の伝達は人間だけが出来うる来世へ結ぶべき究極のマナーと想う。
心に寄り添える音楽の力を夢のしずくに託したい。 シンプルな調べが持つ真の力を信じて。
13.別れの曲 ピアノ・ソロ
広く親しまれ愛される魅力的なメロディ。大人から子ども達まで“あっ知ってる!”と弾む声と笑顔が集まってくる。
主旋律に添う伴奏はハープの音型と想うほど流れるように華麗なタッチでアレンジされ、ピアノの鍵盤の多さ、豊かな色彩を描きます。そしてショパンが残した楽曲は加味しても不変であるメロディの強さを知らせながら、繊細な美しさはそのままに、現代の感性で別れの曲を艶やかに楽しませてくれます。
ショパンは作曲家であり、演奏家でもあった。 でもショパンの演奏を聴く事はできない。 今、此処に作曲家でもあり演奏家でもある塩入さんの作品を聴かれる幸せに感謝いたします。

昨日まで書きかけていたTokyo 3a.m.のイメージ時間に風景と心象音楽が重なるとき。または音楽心象のみが安らぎを連れてくるとき。前半で書きました理想郷、桃源郷でもなく。
いつも傍にいてくれる音楽が待ってた。
偽りのないメロディだから心に融け込んでくる。喜怒哀楽、キレイごとじゃない部分とも向きあえる。音楽が持つ力の真実があるこの場所は。
想い出が紡ぐありのままの感情を
楽曲は総てで包んでくれる Tokyo 3a.m.  
 心の時計時間

6月25日 川井郁子NAGOYA Blue Note
川井郁子コンサート@Nagoya Blue Note
出演:川井郁子(vln)/塩入俊哉(p)/伊丹雅博(g)
-Program-
アルバ(夜明け):川井郁子
エル・チョクロ:アンヘル・ビジョルド
ラ・クンパルシータ:ロドリゲス
風が運ぶララバイ:川井郁子
水百景:川井郁子
序奏とロンド・カプリチオーソ:サン・サーンス
チャルダッシュ:モンティ
オブリビオン:ピアソラ
エスクアロ:ピアソラ
リベルタンゴ:ピアソラ
レッド・ヴァイオリン:川井郁子/ロドリーゴ
encore
モーニング・トゥ・ザ・フューチャー:川井郁子

川井さんは塩入さんのソロライブでゲスト出演なされた以来です。
ライブハウスはと、思い返せば久しぶり。近年は大きなホールでが殆どでした。
今回は川井さんのおしゃべりがリラックス、あんどサポート男性二名を交えての会話が滑らか。伊丹さん(川井さん曰く:努力の方)塩入さん(同:音楽の引き出しの多い方)とも饒舌な対話と演奏がステージ上の和そしてライブハウスでの一体感をぐっと身近な雰囲気へと感じ取れました。
そして、はい。無駄なものは要らないですね。教訓m(_ _)m
ジプシー調の哀愁が漂うエキゾチックなメロディにピアノとギターが最初から密な音で熱く絡む。川井さんは重心深く悠々と奏でられオープニング。アルバ(夜明け)♪です。
ピアノソロもあって、砂塵を興す熱風が吹き抜ける壮大な広がりを与えていきます。熱い曲の幕開けが川井さんよねと思いながら エル・チョクロのVnイントロソロ響きが綺麗でうっとりしてしまい、いつの間にか添っていた柔らかなピアノ。そして一気にタンゴが開ける熱情は本能的なリズムのぶつかり合い。この二曲で伊丹さんのギターの和音が力強くてカッコいいと聴いていました。と思う間もなくものすごい高速の技での三人のアンサンブルが絡みついて圧巻でした。
呆気にとられたままラ・クンパルシータへ。正直ぼおぉっとしてしまい、両方の曲が混ぜ混ぜになってしまいました。あ〜〜ものすごいテクニックと集中力。
そこへ風が運ぶララバイ♪という曲。ピアノとのデュオです。ふぅう〜と一息。
難民キャンプを訪れた際に川井さんが感じられた風をイメージなされた曲と。子ども達へ向けるララバイ=子守唄。私は行ったことなどないのでホント偉そうなことを申しては失礼ゆえ感想ですので。
万国共通の母の優しい眼差しが注がれ子ども達の目をキラキラと輝かせる希望と愛情の音色がしっとりとしたメロディで語られていました。
水百景♪水の豊かな清流です。ワルツで涼な風に葉がそよぐ。梅雨の今にこの清涼感が嬉しい。心が弾んで魚も跳ねて踊り出しそう。清流が運ぶ自然の匂い、が感じられ音楽森林浴。
カプリチオーソはクラシックでも大好きで超絶技も存じております。川井さんのライブ演奏では鳥肌立ちます。Vnとピアノの掛け合い、ひっきりなしに刻むギター、超絶技も飛んじゃって美しい曲だなって感激大です。
モンティのチャルダッシュ。もう色んなところで何回聴いてきたことか。ピッチが早くても整然としている川井さんが好きです。そして早弾きに添うお二人の演奏も超絶リズムなのですが荒くない、しなやかなタッチで涼しい顔なのです。凄いです。そう、あの超絶早弾きの一瞬前、川井さんは正面をぐっと見据え微笑むのですよ。刺激的。参ります。
ピアソラを聴いていて、ピアソラのイメージ、情熱と混沌と渦巻く不安、そして解放の世界を想い、また色々な演奏者の音色も感じ、ふっと今迄ずっと川井さんが作る上げるライブでのオリジナルもクロスオーバーの曲も彼女だけの世界と確立されていたと気付く曲でもありました。どの曲もアレンジがご本人である所以が伝わるのでしょう。ピアソラも彼女の世界ですが気付かせてくれました。
リベルタンゴのピアノのイントロ、ギターソロ、ピアノソロ、素敵でした!川井さんはここは自由に弾いて聴かせてと言ってるみたい。自由なタンゴですものね。ま、ちょっと意味合いは違いますか(*^^*)
静かな風景が浮かぶ曲があった。風が運ぶララバイ、水百景など。 "ヴァイオリンを聴く時は目を閉じて、自分の中で自由にイメージを広げるのが秘訣”と言う川井。名器ストラディヴァリウスと彼女が奏でる世界に、目を閉じて触れてみたい。 と、名古屋ブルーノートのHP上にご紹介文がありましたが、深紅の流線型がフィットのお綺麗なドレス姿は見ていないと大損ですね。
でもしっとり聴かせて下さるバラードに、目はステージを見ていても、風景を描いている私がいた。風景だけじゃなく、癒しだけでもなく、曲に込められたあらゆるものへの祈り、川井さんの祈りの語りをきいている。 いままで情熱的で、エネルギッシュな音楽性と妖艶なまでの演奏の感動が先行していました。安らぎを祈る情熱を初めていえ、今迄も込めてらしたのでしょう、聴く感動が増えました。
バラードに限らず レッド・ヴァイオリン。私の音楽世界観を一気に拡げてくださった曲です。来年デヴュー10周年を迎えられるとの事。10年前の感動が今も続いている喜びに感謝し、カスタネットの響きに深紅のドレスがフラメンコを踊る衣装のように揺れたのか、胸が熱くなってぼやけちゃったのか。この曲にも熱いエネルギーの祈りを感じていた。
アンコール、心も澄み渡る爽快な曲想にピアノとギターのテンポの良さ。深くそれでいて軽やかなヴァイオリンがすうぅっと駆け抜けて生命力を充たしていきます。
ありがとうございました。
川井さんのライブを聴いて、塩入さん伊丹さんの演奏のフットワークの軽さ。なんでもこなされてしまいそうな予感。
10周年、必ず聴きに伺います。

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